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再生医療等提供計画情報の詳細情報です。

第二種
令和5年1月12日
令和6年4月15日
慢性腎臓病患者の腎不全への進行抑制を目的とする無血清培地で培養した自家脂肪由来間葉系幹細胞の移入療法
無血清培地で培養した間葉系幹細胞を用いた腎不全抑制療法
広島大学病院
安達 伸生
既存の治療法では腎不全に進行するリスクの高い慢性腎臓病患者に対して「無血清培地に低酸素環境での培養を加えた自家脂肪由来間葉系幹細胞」(特定細胞加工物)の静脈内点滴投与を行い、投与開始から12カ月後までの安全性を評価することである。さらに、尿検査、血液検査、MRI検査、腎生検組織検査の結果から治療効果を評価する。
1-2
慢性腎臓病
募集終了
広島大学再生医療等委員会
NA8150006

変更内容

管理者(多施設共同研究として実施する場合は代表管理者)
氏名:工藤 美樹
氏名:安達 伸生
管理者(多施設共同研究として実施する場合は代表管理者)
Name:Kudo Yoshiki
Name:Adachi Nobuo
細胞提供者又は代諾者に対する説明文書及び同意文書の様式(別紙)
【PREMISE】ICF_v2.0_20231212.pdf
【PREMISE】ICF_v2.1_20240301 .pdf
(2)その他再生医療等技術の安全性の確保等に関する措置
再生医療等を受ける者又は代諾者に対する説明及び同意文書の様式(別紙):【PREMISE】ICF_v2.0_20231212.pdf
再生医療等を受ける者又は代諾者に対する説明及び同意文書の様式(別紙):【PREMISE】ICF_v2.1_20240301 .pdf
研究の進捗状況
進捗状況:募集中 / Recruiting
進捗状況:募集終了 / Not Recruiting
1 認定再生医療等委員会意見書
意見書(第2種変更)_jRCTb060220083.pdf
意見書(第2種変更)_jRCTb060220083_20240329.pdf
2 提供する再生医療等の詳細を記した書類(研究として再生医療等を行う場合は、研究計画書)
【PREMISE】PRT_ver2.0_20231212.pdf
【PREMISE】PRT_ver2.1_20240301.pdf
4 再生医療等を受ける者に対する説明文書及び同意文書の様式
【PREMISE】ICF_v2.0_20231212.pdf
【PREMISE】ICF_v2.1_20240301 .pdf
20 その他(本文中に掲載しきれない説明書類等)
【PREMISE】PRT_変更箇所一覧v2.0-1.4.pdf
【PREMISE】PRT_変更箇所一覧v2.1-2.0.pdf
21 その他(本文中に掲載しきれない説明書類等)
【PREMISE】ICF変更箇所一覧v2.0-1.4.pdf
【PREMISE】ICF変更箇所一覧v2.1-2.0.pdf

1 提供しようとする再生医療等及びその内容

申請者情報

令和6年4月11日
jRCTb060220083
広島大学病院
広島県広島市南区霞1丁目2-3
安達 伸生 Adachi Nobuo

(1)再生医療等の名称及び分類

慢性腎臓病患者の腎不全への進行抑制を目的とする無血清培地で培養した自家脂肪由来間葉系幹細胞の移入療法
Therapy for prevention of renal failure in CKD patients using autologous adipose tissue-derived mesenchymal stem cells cultured in serum-free medium
( PREMISE )
無血清培地で培養した間葉系幹細胞を用いた腎不全抑制療法 Therapy for prevention of renal failure using mesenchymal stem cells cultured in serum-free medium( PREMISE )
第二種
政令の除外技術でなく、人の胚性幹細胞/人工多能性幹細胞/人工多能性幹細胞様細胞のいずれでもなく、遺伝子操作を行わず、かつ動物の細胞も利用しない。さらに、投与を受ける者から採取した細胞であることから、第一種には該当しない。自家由来体性幹細胞で培養を行うことから第二種再生医療等技術と判断した。

(2)再生医療等の内容

既存の治療法では腎不全に進行するリスクの高い慢性腎臓病患者に対して「無血清培地に低酸素環境での培養を加えた自家脂肪由来間葉系幹細胞」(特定細胞加工物)の静脈内点滴投与を行い、投与開始から12カ月後までの安全性を評価することである。さらに、尿検査、血液検査、MRI検査、腎生検組織検査の結果から治療効果を評価する。
1-2
実施計画の公表日
2025年09月30日
10
介入研究 Interventional
単一群 single arm study
非盲検 open(masking not used)
ヒストリカルコントロール historical control
単群比較 single assignment
治療 treatment purpose
① 本人による同意が得られている患者
② 全身状態が安定している(Performance Status: PS 0もしくは1)患者
③ 同意取得時の年齢が18歳以上80歳未満の患者、性別は不問
④ 糖尿病性腎臓病、IgA腎症、腎硬化症のいずれかを原疾患とする慢性腎臓病患者
⑤ 登録前の検査において、腎機能G3期(eGFR 30~60 mL/min/1.73 m2)かつ蛋白尿異常(0.15 g/gCre以上)が3カ月以上前より持続することが確認できる患者
1) Patient with written informed consent.
2) Patient with Performance Status (PS) 0 or 1.
3) Both genders, 18 to 80 years old.
4) Chronic kidney disease patients due to diabetic kidney disease, IgA nephropathy, or nephrosclerosis.
5) Patients with eGFR 30-60 mL/min/1.73 m2 and proteinuria (more than 0.15 g/gCre) for 3 months or more.
① 糖尿病性腎臓病、IgA腎症、腎硬化症以外の腎疾患を有する患者、並びに一次性および二次性ネフローゼ症候群の患者
② 腎移植の既往あるいは同意取得後3年以内に予定している患者
③ 抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬の全身投与を必要とする活動性の感染症を有する患者
④ スクリーニング検査でHBs抗原、HCV抗体、HIV抗体、HTLV-1抗体、梅毒血清反応のいずれかが陽性の患者
⑤ 副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、抗凝固薬(ワルファリン)、抗血小板薬の全身投与を受けている、あるいは同意取得前3ヵ月以内に投与されていた患者
⑥ 血糖コントロールが不良(スクリーニング時にHbA1c 7.5%以上)の患者
⑦ 悪性新生物を有しているまたは同意取得前5年以内にその既往がある患者、あるいは諸検査によって悪性新生物の可能性があると判断された患者
⑧ 精神疾患あるいは薬物依存等の疾患を有する患者
⑨ 重篤な心疾患、呼吸器疾患、肝疾患などの合併症を有する患者
⑩ 重度の過敏症あるいはアナフィラキシーショックの既往がある患者
⑪ ペニシリン系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質に対するアレルギーあるいはアレルギーの既往がある患者
⑫ 出血している、易出血性を有する、あるいは血液凝固系に異常を有する患者
⑬ ヘパリンに対するアレルギーあるいはヘパリン起因性血小板減少症の既往がある患者
⑭ 同意取得前6カ月以内に他の介入を伴う臨床研究に参加した患者、あるいは他の臨床研究に参加中である患者
⑮ 他の細胞治療をした経験のある患者
⑯ 妊娠中、授乳中、妊娠の可能性、あるいは妊娠希望のある女性患者、または男女ともに試験期間中の担当医師の指導に基づく避妊を行うことに同意できない患者
⑰ 担当医師により本臨床研究への参加が適当でないと判断された患者
1) Patients with renal diseases other than diabetic kidney disease, IgA nephropathy, nephrosclerosis, or patients with primary and secondary nephrotic syndrome.
2) Patients with a history of renal transplantation or scheduled within 3 years.
3) Patients with active infectious diseases requiring intravenous administration of antimicrobial agents, antiviral drugs, and antifungal drugs.
4) Patients with positive for hepatitis B virus, hepatitis C virus, human Immunodeficiency virus (HIV), human T-cell leukemia virus 1 (HTLV-1) or syphilis.
5) Patients receiving corticosteroids, immunosuppressants, anticoagulants (warfarin) and antiplatelet drugs (including patients who received these within 3 months).
6) Diabetics not well controlled.
7) Patients with malignant neoplasm or history of malignant neoplasm within 5 years, or judged possibility of malignant tumor.
8) Patients with mental illness or drug dependence.
9) Patients with serious complications such as heart disease, respiratory disease and liver disease.
10) Patients with history of severe hypersensitivity or anaphylactic reaction.
11) Patients with or have a history of Allergies to penicillin antibiotics or aminoglycoside antibiotics.
12) Patients with bleeding, easy bleeding or abnormality in the blood coagulation system.
13) Patients with history of hypersensitivity to components of heparin preparations, history of heparin-induced thrombocytopenia.
14) Patients who have participated in clinical studies with intervention within 6 month, or who are participating in other clinical studies.
15) Patients who have received other cell therapies.
16) During pregnancy, lactation, may be pregnant or both men and women who do not agree to give birth control under the guidance of the investigator or investigator during the study period.
17) Patients judged by the doctor to be inappropriate for participation.






18歳 以上 18age old over
80歳 未満 80age old not
男性・女性 Both
① 被験者より臨床研究への参加に対する同意撤回の申し出があった場合
② 登録後に被験者が選択基準を満たしていないこと、もしくは除外基準を満たしていることが判明した判明した場合
③ 特定細胞加工物の製造を2回実施しても、2回とも出荷判定基準を満たさなかった場合
④ 特定細胞加工物の投与後に判明する出荷当日の検査において、出荷判定基準を満たしていないことが判明した場合
④ 疾患の症状により臨床研究の継続が不可能となった場合
⑤ 被験者の転居等により臨床研究の継続が不可能となった場合
⑥有害事象の発現により、実施責任者が臨床研究の継続が困難と判断した場合
⑦研究実施計画書からの重大な逸脱が発生した場合
⑧ その他、研究の継続が好ましくないと実施責任者または研究分担者が判断した場合
慢性腎臓病 Chronic kidney disease
D051436
糖尿病性腎臓病、IgA腎症、腎硬化症 Diabetic kidney disease, IgA nephropathy, Nephrosclerosis
自家脂肪由来間葉系幹細胞の静脈内投与 Intravenous administration of autologous adipose tissue-derived mesenchymal stem cells
安全性(有害事象の種類と重症度、発生頻度、発現期間、因果関係) Safety: AE, Severity, Frequency, Period, Reasonable Possibility
有効性(腎機能、尿検査、腎臓の大きさ、腎臓の組織学的評価) Efficacy: Renal function, Urinalysis, Kidney size, Histological evaluation of the kidney
別添の通り
別添:再生医療等の内容(再生医療等の内容をできる限り平易な表現を用いて記載したものを含む)

2 人員及び構造設備その他の施設等

(1)人員及び構造設備その他の施設に関する事項

医師
中島 歩 Nakashima Ayumu
40448262
広島大学 Hiroshima University
大学院医系科学研究科 幹細胞応用医科学共同研究講座
734-8551
広島県広島市南区霞1丁目2-3 1-2-3 Kasumi, Minami-ku, Hiroshima, Hiroshima
082-257-1987
ayumu@hiroshima-u.ac.jp
自施設
救急外来・高度救命センター・手術室を備えており、それぞれ専門のスタッフが24時間体制で勤務している。

(2)その他研究の実施体制に関する事項

佐々木 健介 Sasaki Kensuke
広島大学病院 Hiroshima University Hospital
腎臓内科
734-8551
広島県広島市南区霞1-2-3 1-2-3 Kasumi, Minami-ku, HIROSHIMA 734-8551, Japan
082-257-1506
082-257-1508
kensasaki@hiroshima-u.ac.jp
医師
中島 歩
40448262
広島大学
大学院医系科学研究科 幹細胞応用医科学共同研究講座
医師
正木 崇生
30397913
広島大学病院
腎臓内科
医師
佐々木 健介
40770326
広島大学病院
腎臓内科
医師
石内 直樹
30898010
広島大学
大学院医系科学研究科 幹細胞応用医科学共同研究講座
医師
尾崎 陽介
広島大学病院
腎臓内科
医師
高橋 輝
広島大学病院
腎臓内科
医師
永松 将吾
00420563
広島大学病院
形成外科
医師
佐々木 彩乃
広島大学病院
形成外科
医師
前岡 侑二郎
広島大学病院
腎臓内科
広島大学病院
横山 裕美
広島大学病院
広島臨床研究開発支援センター 臨床研究・計画実施支援部門
広島大学病院
田村 奈津子
広島大学病院
広島臨床研究開発支援センター 臨床研究・計画実施支援部門
広島大学病院
平松 信祥
広島大学病院
広島臨床研究開発支援センター 監査・信頼性保証部門
広島大学病院
秋田 智之
広島大学病院
広島臨床研究開発支援センター 臨床研究・計画実施支援部門
広島大学病院
平田 泰三
広島大学病院
広島臨床研究開発支援センター 臨床研究・計画実施支援部門
広島大学病院
福谷 美紀
広島大学病院
広島臨床研究開発支援センター 臨床研究・計画実施支援部門

(3)多施設共同研究に関する事項

3 再生医療等に用いる細胞の入手の方法並びに特定細胞加工物の製造及び品質管理の方法等

(1)再生医療等に用いる細胞の入手の方法(特定細胞加工物を用いる場合のみ記載)

自家脂肪由来間葉系幹細胞
再生医療等の提供を行う医療機関と同じ
本「再生医療等を受ける者の適格基準」を満たすこと
再生医療等を受ける被験者自身の細胞を用いるため、細胞提供者としてのスクリーニングは行わない。
皮下脂肪の採取は広島大学病院の外来処置室で無菌的に、キシロカインを用いた局所麻酔後、鼠径部または腹部をメスにて2cm切開して約10 gの皮下脂肪を無菌ボトルに採取する。

(2)特定細胞加工物の製造及び品質管理の方法(特定細胞加工物を用いる場合のみ記載)

無血清培地を基礎培地として低酸素環境での培養を加えた自家脂肪由来間葉系幹細胞
特定細胞加工物の製造
広島大学病院細胞培養加工施設にて、被験者より採取した皮下脂肪から間葉系幹細胞を分離し、無血清培地(STKシリーズ)で継代培養した後に、低酸素環境での培養を加えた自家脂肪由来間葉系幹細胞である。

品質管理の方法
工程内管理試験として、外観検査、細胞生存率、微生物培養検査、感染症検査(マイコプラズマ否定試験、エンドトキシン試験、グラム染色)、細胞表面抗原検査を実施する。

保管方法
中間製品は広島大学病院細胞培養加工施設の−150℃超低温フリーザーで保管する。最終製品は、当該病棟のナースステーションにて室温下で保管する。室温下での保管期間は24時間以内とする。
広島大学病院入院棟9階(腎臓内科病棟)にて静脈内点滴投与
国立大学法人広島大学 学長 越智光夫
FC6210007
広島大学病院細胞培養加工施設
委託なし

(3)再生医療等製品に関する事項(再生医療等製品を用いる場合のみ記載)

(4)再生医療等に用いる未承認又は適応外の医薬品又は医療機器に関する事項(未承認又は適応外の医薬品又は医療機器を用いる場合のみ記載)

4 再生医療等技術の安全性の確保等に関す措置

(1)利益相反管理に関する事項

① 再生医療等に対する特定細胞加工物製造事業者からの研究資金等の提供その他の関与

② 再生医療等に対する医療薬品等製造販売業者等からの研究資金等の提供その他の関与

株式会社ツーセル
株式会社ツーセル TWOCELLS COMPANY, LIMITED
非該当
2022年04月01日
間葉系幹細胞用の無血清培地(STKシリーズ)
特定細胞加工物の製造

③ 再生医療等に対する特定細胞加工物製造事業者又は医療品等製造販売業者等以外からの研究資金

(2)その他再生医療等技術の安全性の確保等に関する措置

本臨床研究で用いる間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells; MSC)は、既に多くの臨床研究で使用されており、2022年11月15日にClinical Trial.govにて”Mesenchymal stem cells”と検索した結果、募集前、募集終了も含めて905件の臨床試験が登録されている。海外での一例として、慢性期脳梗塞患者に対して、自家骨髄由来MSCの静脈投与による長期間の有効性および安全性が報告されている(Lee JS, et al. A long-term follow-up study of intravenous autologous mesenchymal stem cell transplantation in patients with ischemic stroke. Stem Cells, 28: 1099-1106, 2010)。

本臨床研究で用いるMSC用の無血清培地(STK培地)で培養したMSCは、有血清培地を用いて培養する手法と比較して、ロットに依らず均一な性質の細胞が大量に得られる。また、当該培地を用いたMSCを使用した企業治験が行われており(JapicCTl-173603)、その安全性についても担保できていると考えられる。

非臨床安全性評価については、軟寒天コロニー形成試験(株式会社日本バイオリサーチセンター;試験番号410193;2021年11月12日)、核型分析試験(株式会社Chromocenter;試験番号CHR2021072701;2021年11月22日)を実施し、その結果、軟寒天コロニー形成試験については、特定細胞加工物3検体で軟寒天培養中におけるコロニー形成能はないと判定された。核型解析試験については、特定細胞加工物3検体で染色体本数解析およびカリオタイピングにてクローン性の異常はないと判定された。特定細胞加工物(4継代)を8継代まで過継代させた細胞については、3株中2株でクローン性の異常はないと判定されたが、1株についてはカリオタイピングではクローン性の異常はないと判定されたものの、染色体本数解析では30細胞中3細胞に45本染色体を認め、クローン性の異常はないとの判定はなされなかった。以上から、過継代させた細胞では造腫瘍性のリスクを完全には払拭できないものの、特定細胞加工物に造腫瘍性は認められず、当該加工物の造腫瘍性に関して、重大な懸念となる事項はないと判断した。

さらに、免疫不全マウスを用いた単回静脈内投与毒性試験(株式会社安評センター;試験番号K202;2022年2月3日)を実施し、臨床試験と同等の投与細胞数(1×106細胞/kg)かつ細胞濃度の特定細胞加工物を免疫不全マウスに単回静脈内投与した場合の毒性影響はないと判定された。

多数のMSCを血管内に投与した際に懸念される血栓形成・細胞塞栓については、MSCの継代数が増加するにつれて、Tissue factorの増加とThrombomodulinの低下がみられたことから、使用するMSCの継代数を4と決定した。また、マウス造影剤腎症モデルを用いて、肺塞栓による死亡の発生について検討し、有血清培地で培養したMSCでは5×106細胞/kg(本臨床試験における投与細胞数の5倍)の投与で28匹中8匹が死亡したが、STK培地で培養したMSCでは5×106細胞/kgの投与で22匹全例の生存を確認した。STK培地で培養したMSCは容積が均一で小さいことが細胞塞栓を生じるリスクを減少させたと考えられた。一方、ヘパリンの前投与の有効性についても検討し、全例(6匹中6匹)が死亡する2.5×107細胞/kgのSTK培地で培養したMSCをラット尾静脈から投与する実験系において、ヘパリンを前投与したところ全例(6匹中6匹)の生存を確認した。また、ヘパリン(50 U/kg)の前投与は、非投薬群と比較して肺小動脈内の細胞塞栓を強力に抑制することを確認した(各群6匹)。さらに、ヘパリン(50 U/kg)の前投与は、非投与群と比較して、MSCの腎線維化モデルに対する治療効果は同等であったことから(各群6匹)、臨床的な許容範囲を考慮しても問題のない体重1kgあたり50 Uのヘパリンを前投与することで、安全面にも最大限に配慮した臨床研究を実施可能であると判断した。
腎機能低下を有する腎動脈狭窄症患者に対して、自家脂肪由来MSCの腎動脈投与は、腎血流を増加させ腎機能の低下を抑制することが報告されている(Abumoawad A, et al. In a Phase 1a escalating clinical trial, autologous mesenchymal stem cell infusion for renovascular disease increases blood flow and the glomerular filtration rate while reducing inflammatory biomarkers and blood pressure. Kidney Int. 97:793-804, 2020) 。また、糖尿病性腎臓病患者に対して、他家骨髄由来MSCの静脈投与は、腎機能の低下を抑制することが示唆されている(Packham DK, et al. Allogeneic Mesenchymal Precursor Cells (MPC) in Diabetic Nephropathy: A Randomized, Placebo-controlled, Dose Escalation Study. EBioMedicine. 12:263-269, 2016) 。本臨床研究とこれらの先行研究の相違点は、MSCの培養に無血清培地(STK培地)を用いる点と、低酸素環境での培養を加える点であるが、この点については、本特定細胞加工物がMSCとしての性質を保持していること、具体的には、① 接着細胞であること、② 骨、脂肪、軟骨に分化すること、③ MSCの細胞表面抗原発現パターン(CD29陽性、CD44陽性、CD73陽性、CD90陽性、CD11b陰性、CD34陰性、CD45陰性、HLA-DR陰性)を示すことを確認している。従って、本臨床研究に用いる特定細胞加工物も先行研究のMSCと性質上同等であり、提供する再生医療等の妥当性について、先行する動物実験や臨床研究の結果を外挿可能である。また、本特定細胞加工物の投与細胞数についても、先行する臨床研究を上回る投与細胞ではない。

実施責任者らは、STK培地で培養したMSCは、炎症細胞浸潤を早期から阻害するTumor necrosis factor-α-induced protein 6 (TSG-6) の分泌が増加し、マクロファージのフェノタイプを炎症抑制系へ誘導することに加えて(Nagasaki K, et al. Mesenchymal stem cells cultured in serum-free medium ameliorate experimental peritoneal fibrosis Stem. Stem Cell Res Ther. 12:203, 2021)、CD4陽性T細胞を制御性T細胞に誘導することで(Takao S, et al. Human bone marrow-derived mesenchymal stromal cells cultured in serum-free media demonstrate enhanced antifibrotic abilities via prolonged survival and robust regulatory T cell induction in murine bleomycin-induced pulmonary fibrosis. Stem Cell Res Ther. 12:506, 2021)、強い抗炎症作用を発揮することを報告している。また、MSCを低酸素下で培養することによってHepatocyte Growth Factor(HGF)の分泌が増加して、抗線維化作用が増強することを明らかにしている(Ishiuchi N, et al. Hypoxia-preconditioned mesenchymal stem cells prevent renal fibrosis and inflammation in ischemia-reperfusion rats. Stem Cell Res Ther. 11:130, 2020)。実際に、STK培地で培養したMSCの血管内投与は、ラットの一側性尿管結紮によって生じる腎不全への進行を抑制すること(Yoshida K, et al. Serum-free medium enhances the immunosuppressive and anti-fibrotic abilities of mesenchymal stem cells utilized in experimental renal fibrosis. Stem Cells Transl Med. 7:893–905, 2018)、STK培地に低酸素下での培養を加えたMSCの投与によって腎虚血再灌流障害で誘導されるラット腎臓の線維化を抑制できることを報告してきた(Ishiuchi N, et al. Serum-free medium and hypoxic preconditioning synergistically enhance the therapeutic effects of mesenchymal stem cells on experimental renal fibrosis. Stem Cell Res Ther. 12:472, 2021)。加えて、非臨床薬効試験として、ラット腎虚血再灌流障害モデルとラットアドリアマイシン腎症モデルに対して、無血清培地で培養したヒト脂肪由来MSC(低酸素環境での培養を行っていないことが特定細胞加工物と異なる)の静脈投与試験を行い、腎線維化の抑制効果を確認しているとともに、ラットアドリアマイシン腎症モデルについては、血液学的検査 (血清Cre, 血清BUN) で、長期的(2カ月間)な腎機能低下の抑制効果を確認した。そこで、ラット腎虚血再灌流障害モデルに対して、本臨床研究と同等の細胞数・細胞濃度である特定細胞加工物(体重1 kgあたり100万細胞:1 mLあたり2.5×105細胞)を用いた腎動脈投与試験および静脈投与試験を実施し、腎線維化の十分な抑制効果を確認した。

先行する臨床研究に加えて、上記の検討からも、提供する再生医療等について妥当性は確保できていると判断した。

本臨床研究における特定細胞加工物の臨床的有効性が確認されれば、既存の治療法では腎不全に進行するリスクの高い慢性腎臓病患者が腎不全に進行することを抑制する新規の治療法開発に大きく貢献できる。なお、本臨床研究に参加することにより被験者が報酬などの利益を受けることは一切無い。また、本臨床研究により生じる知的財産権は研究者に帰属するものとし、それにより被験者が治療効果以外に利益を受けることはない。一方、本臨床研究の被験者は、研究計画書「11-5-1予想される有害事象」に挙げる有害事象の他に、予期せぬ有害事象が生じる可能性があるが、その際には研究期間終了後であっても速やかに適切な処置と治療をもって対処する。なお、本臨床研究における治療にかかる費用は研究費によって行われ、被験者による負担は生じない。
特定細胞加工物については、出荷3日前(工程内管理試験3-2)に実施する微生物培養検査および細胞表面抗原検査に加えて、出荷当日に実施する外観検査、細胞数、生存率および細胞洗浄液を用いたマイコプラズマ否定試験、エンドトキシン試験、グラム染色による無菌試験法の結果をもって出荷判定を行い、出荷判定責任者の承認を得たものを投与可能として搬出し、投与開始時まで当該病棟のナースステーションで室温下(4℃~30℃、搬出後24時間までは許容範囲)にて保管する。実施責任者または研究分担者は、被験者の細胞投与前日の血液検査および当日の臨床症状およびバイタルサインを確認したうえで、特定細胞加工物の投与の可否を決定する。
自家細胞の特定細胞加工物であるため、投与後に疑義が生じる可能性は極めて少ないが、万が一生じた場合、直ちに実施責任者、再生医療等提供機関の管理者である広島大学病院長に対して速やかに報告しなければならない。当該患者に有害事象が生じ治療が必要であると認められた際には、実施責任者は速やかに報告書を作成し、広島大学病院長に提出しなければならない。さらに、広島大学病院長は受理した報告書の写しを速やかに厚生労働大臣に提出しなければならない。また、実施責任者は、広島大学病院長の指示を受ける前に、必要に応じて本臨床研究の中止または暫定的な措置を講ずることができる。

提供機関管理者は、原因の分析を含む対処方針について、速やかに広島大学再生医療等委員会の意見を聞き、当該実施責任者に対し、中止その他の必要な措置を講ずるように指示しなければならない。なお、必要に応じ、広島大学再生医療等委員会の意見を聞く前に、提供機関管理者は、当該実施責任者に対し中止または暫定的な措置を講ずるよう指示することができる。

実施責任者は、細胞の安全性に疑義が生じた旨を当該患者に速やかに説明し、診療録に説明内容および年月日を記載する。実施責任者または研究分担者は、当該患者に有害事象が認められたときは、直ちに適切な処置を行う。原則として被験者の死亡、転院等により調査不能となった場合を除いて、細胞の安全性に疑義が生じた特定細胞加工物の投与との関連性が否定できない有害事象については、正常化または有害事象として促えないレベルに回復するまで追跡調査を行う。不可逆的な有害事象が認められた場合には、症状が安定するまで追跡調査を行う。
特定細胞加工物の中間製品は広島大学病院細胞培養加工施設内の超低温フリーザー(-150℃)で保管する。特定細胞加工物の最終製品は、広島大学病院入院棟9階(腎臓内科病棟)のナースステーションで室温下(4~30℃は許容範囲)で保管し、24時間以内に使用する。試料及び細胞加工物の一部を10年間保存する際は、広島大学大学院医系科学研究科幹細胞応用医科学共同研究講座の施錠可能な-150℃の冷凍庫で保存する。保存方法は、試料を符号化して匿名化のうえで管理するが、匿名化措置を施した上で、同意を得た使用目的外の利用がなされないよう厳重に管理する。将来、試料を他の研究で使用する際には、再度、広島大学再生医療等委員会における倫理審査を受ける。試料の一部および投与細胞の一部は、将来の有害事象に関する原因検索のために10年間凍結保存を行う。
試料の廃棄は、研究終了後最低10年経過した後にオートクレーブで滅菌処理を行った後に感染性医療廃棄物として廃棄する。
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」およびその施行規則に基づく。本臨床研究との因果関係の有無にかかわらず重篤な有害事象が発生した際は、実施責任者または研究分担者は被験者に対して直ちに適切な処置を行う。広島大学再生医療等委員会にて再生医療等の提供によるものと疑われる疾病、障害もしくは死亡または感染症の発生と判断された事象および情報につき、広島大学病院長に対して速やかに報告しなければならない。また、広島大学病院長の指示を受ける前に、必要に応じて本臨床研究の中止または暫定的な措置を講ずることができる。
再生医療等の提供終了後1年間は追跡調査を行い、投与前および投与12カ月後に、悪性腫瘍の発現確認としてPET/CT検査を、腎臓のサイズ測定としてMRI検査を行うとともに、被験者の同意が得られた場合には腎生検を実施し、腎組織学的検討にて炎症細胞浸潤および線維化の程度を確認する。

1年後に目標症例の登録が予定期間内に終了した場合、最終登録症例の観察期間終了日を臨床研究実施期間終了日とする。実施責任者は、臨床研究実施期間が終了したことを統計解析責任者、広島大学再生医療等委員会、広島大学病院管理者および関連部門に報告する。研究計画書に記載した主たる評価項目に係わるデータの収集を行うための期間が終了した時は、原則としてその日から1年以内に主要評価項目報告書(研究計画書につき当該収集の結果等をまとめた概要)を、臨床研究の内容に関する事項として記載した全ての評価項目に係るデータの収集を行うための期間が終了したときには原則としてその日から1年以内に総括報告書(臨床研究の結果を取りまとめた文書)及びその概要をそれぞれ作成し、特定認定再生医療等委員会に提出する。

なお、臨床研究終了後の定期的外来診療で得られたデータは、解析には含めない。疾病等の発生が生じた場合は特定認定再生医療等委員会に報告を行う。
情報の把握のため、再生医療等を受ける際は入院で2泊3日で実施する。その後、投与2週間後、4週間後、2ヶ月後、4ヶ月後、8ヶ月後、10ヶ月後、1年後に評価を行う。研究終了後も定期的な外来受診を促す。定期的外来診療により合併症の有無、および有効性について評価を行う。再生医療等の提供による重篤な有害事象は全て報告を行う。また、緊急時の対応が可能なように、患者の連絡先を把握しておく。
実施計画の公表日
2023年07月24日
募集終了 Not Recruiting

5 細胞提供者及び再生医療等を受ける者に対する健康被害の補償の方法

細胞提供者について

再生医療等を受ける者について

6 審査等業務を行う認定再生医療等委員会に関する事項

広島大学再生医療等委員会 Certified Committee for Regenerative Medicine Hiroshima University
NA8150006
広島県広島市南区霞一丁目2番3号 1-2-3 Kasumi, Minami-ku, Hiroshima, Hiroshima
082-257-5908
iryo-seisaku@office.hiroshima-u.ac.jp
第一種再生医療等又は第二種再生医療等を審査することができる構成
2022年12月15日

7 その他

被験者の同意取得後はデータ管理、製造管理など、症例の取り扱いにおいては全て連結可能匿名化された被験者識別コード又は登録番号により管理され、匿名化コードと氏名の対照表及び氏名記載同意書は施錠可能な書類保管庫に厳重に保管する。また、公表に際しては被験者の名前が直接公表されることがない等、被験者の個人情報の保護については十分に配慮する。
個人情報の管理者は実施責任者あるいは研究分担者でないものが行う。個人情報管理者は、個人識別情報とその対応表を外部とは独立したパーソナルコンピュータで管理し、個人情報管理者しか知らないパスワードを設定し、コンピュータをセキュリティーの厳重な部屋に保管することにより、情報の漏洩に対する安全対策を講じる。
No
個人情報管理者は、個人識別情報とその対応表を外部とは独立したパーソナルコンピュータで管理し、対応表は外部に提供することはない。 The administrator of personal information manages personal identification information and its communication table on the blocked computer, and the communication table is not provided to others.
再生医療等を行う医師その他の再生医療等に従事する者は、再生医療等を適正に行うために定期的に適切な教育又は研修を受け、情報収集に努める。研究責任者は、本研究に参加する研究者を対象として、研究開始前、および研究開始後は年度ごとに少なくとも1回、以下に例示するような事項について理解を深めるための、教育及び研修の場を設ける。
1. 厚生労働省「再生医療等の安全性の確保に関する法律」について
2. 特定細胞加工物等に関する知識(倫理的な考え方を含む)
3. 調製される細胞培養加工物等の安全な取扱いに関する知識及び技術
4. 施設・装置に関する知識及び技術
5. 調製工程の安全性に関する知識及び技術
6. 事故発生時の措置に関する知識及び技術
7. 「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に準じて、研究倫理並びに研究実施に必要な知識及び技術再生医療等の提供に係る関係者に対し、その者が担当する作業内容及び種類に照らして必要な教育訓練を実施する。製造及び品質管理業務に関わる職員に対しては、年に1回程度文書及び製造・品質管理体制の概要について講習を行う。作業工程職員に対しては、SOP及び実地訓練を行う。
教育・研修の詳細については、「教育訓練に関する手順書」を参照する。
被験者または関係者から本研究に関する相談を受ける窓口を設置する。なお、本研究に関する事項については、実施責任者または研究分担者が適切に対応するが、本研究に関連したその他の問い合わせ(例:診療情報等の開示請求等)については、院内の関係部門へ連絡調整を行う。相談窓口は同意説明文書にも記載する。
非該当
なし none
非該当
非該当
非該当

添付資料

4 再生医療等を受ける者に対する説明文書及び同意文書の様式 【PREMISE】ICF_v2.1_20240301 .pdf

変更履歴

種別 公表日
変更 令和6年4月15日 (当画面) 変更内容
軽微変更 令和6年4月5日 詳細 変更内容
変更 令和6年2月6日 詳細 変更内容
変更 令和5年12月18日 詳細 変更内容
軽微変更 令和5年9月28日 詳細 変更内容
軽微変更 令和5年6月13日 詳細 変更内容
変更 令和5年6月12日 詳細 変更内容
軽微変更 令和5年4月25日 詳細 変更内容
新規登録 令和5年1月12日 詳細