jRCT ロゴ

臨床研究等提出・公開システム

Top

English

再生医療等提供計画情報の詳細情報です。

第二種
令和6年12月11日
複数回投与自己末梢血単核球生体外培養増幅細胞(Ricacell)の脱毛症を有する患者を対象とした第1 / 2相臨床研究
複数回投与自己末梢血単核球生体外培養増幅細胞(Ricacell)の脱毛症を有する患者を対象とした第1 / 2相臨床研究
順天堂大学附属順天堂医院
桑鶴 良平
脱毛症を有する患者に対する自己末梢血単核球生体 外培養増幅細胞(Ricacell)の複数回投与の安全性と有効性を探索的に検討する。
1-2
脱毛症
募集中
特定非営利活動法人先端医療推進機構特定認定再生医療等委員会名古屋
NA8150002

1 提供しようとする再生医療等及びその内容

申請者情報

令和6年12月11日
jRCTb030240544
順天堂大学附属順天堂医院
東京都文京区本郷3-1-3
桑鶴 良平 Kuwatsuru Ryohei

(1)再生医療等の名称及び分類

複数回投与自己末梢血単核球生体外培養増幅細胞(Ricacell)の脱毛症を有する患者を対象とした第1 / 2相臨床研究 The safety and efficacy of multiple dose autologous Regenerative function Induced and Conditioned peripheral blood Associated cell (Ricacell) for alopecia: Phase 1 / 2 clinical study( Phase 1/2 clinical trial using Ricacell for alopecia )
複数回投与自己末梢血単核球生体外培養増幅細胞(Ricacell)の脱毛症を有する患者を対象とした第1 / 2相臨床研究 The safety and efficacy of multiple dose autologous Regenerative function Induced and Conditioned peripheral blood Associated cell (Ricacell) for alopecia: Phase 1 / 2 clinical study( Phase 1/2 clinical trial using Ricacell for alopecia )
第二種
本再生医療は、ヒト胚性幹細胞・人工多能性幹細胞等を用いず、遺伝子導入も行わず、自己の幹細胞(血管内皮前駆細胞)を含む末梢血単核球を培養に供して得られた細胞を移植する方法で行われる。再生医療等技術のリスク分類表に従い判断した結果、第二種再生医療等技術に分類されると判断した。

(2)再生医療等の内容

脱毛症を有する患者に対する自己末梢血単核球生体 外培養増幅細胞(Ricacell)の複数回投与の安全性と有効性を探索的に検討する。
1-2
実施計画の公表日
2027年03月01日
20
介入研究 Interventional
単一群 single arm study
非盲検 open(masking not used)
非対照 uncontrolled control
単群比較 single assignment
治療 treatment purpose
1. 患者本人から文書による同意が得られること
2. 同意取得時の満年齢が18歳以上の者
3. 脱毛症を有し、再生医療による治療を希望する患者
1. Patients with written informed consent.
2. Patiens are at least 18 years of age 18 at the time of informed consent.
3. Patients affected alopecia and want to receive regenerative therapy.
1. 糖尿病を有する患者でコントロール不良な者(糖尿病に対する内科的治療を行った結果、HbA1C(NGSP)が10.0%以上の場合)
2. 全身性の感染症を有する患者
3. 重度の貧血を認める患者
4. 悪性腫瘍を合併する患者、又は悪性腫瘍の治癒後5年以内(乳がんは10年以内)の患者。ただし、皮膚基底細胞がんは治癒後すぐに研究に参加しても良い
5. 血液腫瘍、骨髄増殖性疾患又は骨髄異形成症候群等の血液疾患を合併している患者
6. 妊娠している患者
7. スクリーニング期間の検査で、HIV、活動性のHBV、HCV、HTLV、梅毒のいずれかへの感染が認められた患者
8. 合併症等により余命が1年以内と考えられる患者
9. 同意取得前90日以内に他の治験に参加していた者(治験薬が投与されなかった場合を除く)
10. 本臨床研究期間中に内服の変更をしないことに同意を得られない患者
11. その他、研究責任医師又は研究分担医師が本研究の対象として不適当と判断した者
1. Patients with HbA1c(NGSP) more than 10.0 with the medication for diabetes.
2. Patients with systemic infection.
3. Patients with severe anemia.
4. Patients with malignancy, or within 5 years after recover from malignant tumor (10 years
after breast cancer), except for cutaneous basal cell carcinoma.
5. Patients with hematopoietic disorders such as leukemia, myeloproliferative disease, marr
ow dysplasia syndrome.
6. Pregnant women.
7. Patients infected with HIV, active HBV, HCV, HTLV, or syphilis in screening test.
8. Patients not expect to live for a year or more.
9. Patients enrolled in any other clinical trial within 90 days before informed consent.
10. Patients who can't consent not to change medication.
11. Any other reason that the Clinical Researchers may have for considering a case unsuit able for the study.
18歳 以上 18age old over
上限なし No limit
男性・女性 Both
1. 臨床研究の継続による被験者の健康への容認できないリスクを避けるため、早期の中止が必要な有害事象が発現した場合、被験者の妊娠が判明した場合、もしくは被験者が有害事象により臨床研究の継続を望まない場合
2. 被験者が臨床研究実施計画書の組入れ基準を満たさないことが判明した場合、又は臨床研究実施計画書を遵守しなかったため、臨床研究の継続により被験者の健康へ容認できないリスクを与える場合
3. 被験者が来院せず、連絡も取れない場合。この場合は連絡を取ろうとしたことを原資料に記録する。
4. 被験者から臨床研究への参加辞退の申し出や同意の撤回があった場合。中止の理由が聴取できた場合は、症例報告書に記載する。
5. 臨床研究審査委員会、倫理委員会、又は規制当局が本臨床研究を中止した、又は中止するよう決定した場合
6. その他の理由により、臨床研究責任医師又は臨床研究分担医師が当該被験者の本臨床研究への参加を中止することが適当と判断した場合
脱毛症 Alopecia
D000505
脱毛症 Hair loss, alopecia, baldness
・特定細胞加工物(Ricacell)調製のための原材料として末梢血採取のための採血及び、各種検査のための採血を実施する
・調製したRicacellを患者頭部へ皮下投与する
・患者の希望に応じて、特定細胞加工物(Ricacell)の投与のための麻酔を実施する
Drawing peripheral blood as material for cell processing product (Ricacell) and blood for various clinical tests.
Administration of cell processing product (Ricacell) subcutaneously by injection.
Patients who wish to receive anesthesia, administration of cells were injected under anesthesia.
毛髪再生目的でのRicacell複数回投与の安全性
<安全性評価項目>
副作用、有害事象、重篤な有害事象、臨床検査値、バイタルサイン
To investigate the safety of Ricacell injection for alopecia patients.
<Safety evaluation criteria>
side effects, adverse events, serious advese events, clinical laboratory data, vital sign
毛髪再生目的でのRicacell複数回投与の有効性
<有効性評価項目>
1. 外観上の有効性評価 (3名の形成外科専門医により写真を用いて評価)
2. DermascopyやTrichoscopyなどを用いた毛髪の本数、密度、毛径や頭皮色素沈着、毛周期などの変化
3. QOL、患者満足度
4. Hamilton-Norwood scale、Sinclair scale、Ludwig scaleなどの変化
To investigate the efficacy of Ricacell injection for alopecia patients.
<Efficacy evaluation criteria>
1. Evaluation of the changes in appearance(evaluation is done by 3 plastic surgeon).
2. Changes of the number of hairs, hair density, hair diameter, scalp pigmentation, hair cycle. Evaluation is done by using Derm
ascopy or Trichoscopy.
3. QOL and patients satisfaction.
4. Changes of Hamilton-Norwood scale, Sincl
air scale, Ludwig scale.
別添の通り
(1)対象患者:
18歳以上の脱毛症患者を対象とします。ただし、合併症や治療経過などにより、担当医師が不適切と判断した場合は除外します。
(2)方法:
1)通常の方法で採血し、血液から血管内皮前駆細胞を含む単核球を採取します。
2)機能を改善し有効な細胞を増殖させる生体外増幅培養法で5日間培養しRicacellを得ます。
3)培養したRicacell(最大1千万個)を、頭部50箇所へ投与します。
4)投与から約1カ月ごとに最大3回まで繰り返します。採血は1回でとれる細胞の数により1回で済む方と投与毎に必要な方がいらっしゃいます。
5)移植から3カ月間を患者の研究参加期間として観察・検査などを実施し、安全性及び有効性の評価を行います。

2 人員及び構造設備その他の施設等

(1)人員及び構造設備その他の施設に関する事項

医師
松原 忍 Matsubara Shinobu
順天堂大学附属順天堂医院 Juntendo University Hospital
形成外科
113-8431
東京都文京区本郷3-1-3 3-1-3 Hongo, Bunkyo-ku
03-3813-3111
s.matsubara.fs@juntendo.ac.jp
自施設
順天堂大学医学部附属順天堂医院では救急科が設置されており、専属のスタッフのほか他科からの出向専任医が配置され、初期診療補助、複数診療科に関わる疾患や特定の疾患(外傷、中毒、心肺停止など)の治療や、集中治療、院内発症の急変の診療を行っている。 診療の主体は1次および2次救急であるが、かかりつけや院内患者の急変時には3次対応も行う体制が整えられている。救急科として2床と経過観察病床が確保されており、全自動除細動器、超音波診断装置などの設備が整っている。

(2)その他研究の実施体制に関する事項

芝 いずみ Shiba Izumi
順天堂大学 Juntendo University
臨床研究・治験センター
113-8421
東京都文京区本郷2丁目1番1号 Hongo 2-1-1, Bunkyo-ku, Tokyo, Japan
03-3814-5672
03-3813-5018
jcrtc_operation@juntendo.ac.jp
医師
田中 里佳
順天堂大学附属順天堂医院
形成外科
医師
矢内 香織
順天堂大学附属順天堂医院
形成外科
医師
松原 忍
順天堂大学附属順天堂医院
形成外科
順天堂大学
藤林 和俊
順天堂大学
臨床研究・治験センター
一般社団法人 日本再生医療学会
宮澤 直美
一般社団法人 日本再生医療学会
臨床研究支援ユニット
株式会社リィエイル
本多 壮一郎
株式会社リィエイル

(3)多施設共同研究に関する事項

3 再生医療等に用いる細胞の入手の方法並びに特定細胞加工物の製造及び品質管理の方法等

(1)再生医療等に用いる細胞の入手の方法(特定細胞加工物を用いる場合のみ記載)

末梢血単核球
再生医療等の提供を行う医療機関と同じ
細胞提供者は臨床試験に参加する被験者本人とする。以下の基準をすべて満たす場合、本試験の対象とする。
1. 患者本人から文書による同意が得られること
2. 同意取得時の満年齢が18歳以上の者
3. 脱毛症を有し、再生医療による治療を希望する患者
【選択基準の設定根拠】
脱毛症を有する患者は多く、再生医療での治療は今後の一つの選択肢となり得る。男性型脱毛症の年齢ごとの患者数を考慮し、上記選択基準を設定した。
以下の基準のいずれかに該当する場合、本試験の対象としない。
1. 糖尿病を有する患者でコントロール不良な者(糖尿病に対する内科的治療を行った結果、HbA1C(NGSP)が10.0%以上の場合)
2. 全身性の感染症を有する患者
3. 重度の貧血を認める患者
4. 悪性腫瘍を合併する患者、又は悪性腫瘍の治癒後5年以内(乳がんは10年以内)の患者。ただし、皮膚基底細胞がんは治癒後すぐに研究に参加しても良い
5. 血液腫瘍、骨髄増殖性疾患又は骨髄異形成症候群等の血液疾患を合併している患者
6. 妊娠している患者
7. スクリーニング期間の検査で、HIV、活動性のHBV、HCV、HTLV、梅毒のいずれかへの感染が認められた患者
8. 合併症等により余命が1年以内と考えられる患者
9. 同意取得前90日以内に他の治験に参加していた者(治験薬が投与されなかった場合を除く)
10. 本臨床研究期間中に内服の変更をしないことに同意を得られない患者
11. その他、研究責任医師又は研究分担医師が本研究の対象として不適当と判断した者
[被験者の安全性を考慮して設定された項目]
本臨床研究を安全かつ倫理的に遂行することを考慮し、かつ信頼性のあるデータを得ることを考慮して、1〜11の項目を設定した。
臨床研究責任医師又は臨床研究分担医師は、以下の手順に従って採血を行う。
1. 採血は、静脈または動脈より行い、BDバキュテイナCPT単核球分離用採血管(抗凝固剤:クエン酸Na)に移す。各回全血70 mLの採血を行う。
2. 肘窩部皮静脈から採血が困難な場合は採血可能な他の部位から実施する。
3. 採血した血液は、臨床研究責任医師があらかじめ指定した者が常温で順天堂大学難病の診断と治療研究センター内セル・プロセシング室に運搬する。

(2)特定細胞加工物の製造及び品質管理の方法(特定細胞加工物を用いる場合のみ記載)

自己末梢血単核球生体外培養増幅細胞
当該細胞加工物の原材料となる自己末梢血は、被験者本人から採血されたのち、直ちに順天堂大学難病の診断と治療研究センター内セル・プロセシング室(CPC)へ運搬される。当該特定細胞加工物の調製は特定細胞加工物標準書(添付資料)に従い、末梢血から分離した末梢血単核球(PBMNC:peripheral blood mononuclear cell)を基礎培地にサイトカインを添加した無血清培地を用いて浮遊培養することにより行われる。細胞調製工程以降の培養工程はすべて、細胞加工施設として届出
を行っている施設内に設置されたグレードA(ISO Class 5)環境が担保された無菌操作エリア内で無菌的に実施される。加工された細胞加工物は、被験者本人へ投与され保管等は行わない。出荷に際しては、簡易エンドトキシン試験を出荷前に行い、エンドトキシンの混入を否定するほか、無菌試験(液体培養法)、マイコプラズマ試験(PCR法)にて最終的な細菌等の混入の有無を判定する。さらに出荷時には、細胞加工物の有効性を担保するための検査として、細胞特性評価試験を実施する。
当該細胞加工物の被験者への移植は、再生医療等の提供を行う各医療機関の手術室において、患者の希望時には麻酔下に頭部皮下への注射により投与される。
学校法人 順天堂 順天堂大学 再生医学
FC3160087
順天堂大学セル・プロセシング室
該当なし

(3)再生医療等製品に関する事項(再生医療等製品を用いる場合のみ記載)

(4)再生医療等に用いる未承認又は適応外の医薬品又は医療機器に関する事項(未承認又は適応外の医薬品又は医療機器を用いる場合のみ記載)

4 再生医療等技術の安全性の確保等に関す措置

(1)利益相反管理に関する事項

① 再生医療等に対する特定細胞加工物製造事業者からの研究資金等の提供その他の関与

学校法人 順天堂

② 再生医療等に対する医療薬品等製造販売業者等からの研究資金等の提供その他の関与

株式会社リィエイル
株式会社リィエイル ReEir Co., Ltd.
非該当
2024年12月10日
(株)リィエイルに所属(兼務)している者が再生医療を提供する医師として参加するほか、細胞加工の一部を担当しますが、再生医療の提供結果の解析には関与しないため、特定の企業等が研究結果および解析等に影響を及ぼすことはありません。

③ 再生医療等に対する特定細胞加工物製造事業者又は医療品等製造販売業者等以外からの研究資金

(2)その他再生医療等技術の安全性の確保等に関する措置

【臨床の安全性】
本研究と同じ細胞を用いた先行臨床研究として、難治性四肢潰瘍患者10例を対象に自家末梢血単核球(Peripheral Blood Mono Nuclear Cell、以下PBMNC)を生体外無血清増幅培養(Quality and Quantity control culture、以下QQ培養)に供した細胞を単回投与した臨床研究が挙げられ、ヒトにおける一定の安全性と有効性が示唆される結果を得ている(Tanaka R, Stem Cells Transl Med, 2022)。
本製造と同じ工程にて調製(7日間)した製品(自己末梢血単核球生体外培養増幅細胞:MNC-QQ)を前臨床試験にて確認した。下記の結果より製造工程により製品の安全性は損なわれないと考える。また、エンドトキシン、マイコプラズマ、無菌試験を実施し、出荷時の細胞加工物の安全性を確保する。
1. 造腫瘍性試験:
MNC-QQ 1 x 107個を免疫不全マウス(BALB/cAJclnu/nu)の背部皮下に接種し17週間観察を行った。
この結果実施した9例ともに腫瘍形成および異所性発現は確認されなかった。
2. 核型異常:
MNC-QQ(3人分)に対して、G-Band法による核型解析を行った結果、染色体異常は認めなかった。
3. 残留物の確認:
MNC-QQ(2人分)に対して、洗浄後の培地添加物等の残留量の確認を行った結果、血清アルブミン、IL-6、TPOは全て検出感度以下であった(アルブミン:< 1.0 mg/dL、IL-6:<0.2 pg /mL、TPO:< 0.40 fM/mL)。
例えば、IL-6の臨床検査での基準値は≦4.0 pg /mL(SRL社HPより)であることからも体内に入る残存物により有害事象が発生する可能性は極めて低いことが示唆され、洗浄工程は妥当と考えられる。
4.ヒト臨床研究
本研究に用いる細胞と同様の細胞加工物を用いて、難治性四肢潰瘍患者を対象としてFirst in human、単回投与試験を既に実施している。その結果、当該細胞と因果関係があると考えられる有害事象は発生せず、同細胞の安全性が示唆されている。
本製品製造における培養過程で用いる培地及び投与細胞懸濁液には、非自己由来材料としてヒトアルブミンを含むが、使用するヒトアルブミンは本邦で医薬品として承認されている製品である。したがって製品の安全性を含む品質が確保されていると考える。
脱毛症を有する患者は多く、本邦の男性型脱毛症については20代で10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%と報告されている(Manabe, 日皮会誌2017)。脱毛症を発症する原因としては様々ではあるが、特に男性型脱毛症、女性型脱毛症においては、男性ホルモンや毛包周囲の血流低下の関与が示されており、近年はフィナステリドやミノキシジル等の薬剤が広く流
通している。しかし、効果が不十分である症例は多く、また長期的な使用による有害事象により使用不可能となる例も多い。脱毛症によるQOLの低下、社会的活動への制限とそれに伴う生活困難性、長期的な面での医療費負担の軽減を含め、脱毛症に対する確実かつ有効な治療法の実装が切望される。
[発見の経緯]
臍帯血より得られる血管内皮前駆細胞分画としてCD133陽性細胞群について無血清培地による生体外増幅培養法の検討を行い、細胞数を約50倍に増幅し、コロニー産生能(血管再生能)を約3倍に増加させる無血清生体外増幅培養(Quality and Quantity control culture: QQ培養)法を開発した(Masuda, H. et. al. Stem Cell Translational Med. 1, 160, 2012)。このMNC-QQ培養法を糖尿病で機能と数が減弱した血管内皮前駆細胞の機能・数の回復へ応用した。糖尿病末梢血単核球はQQ培養により、その数が約1/3-1/4程度まで減少したが、これは血管内皮前駆細胞以外の細胞群がアポトーシス等によって死滅したためと考えら
れる。この事は、QQ培養後のCD34陽性細胞の割合が約3倍に増えている事で証明される。また、分化型コロニー産生能が5.4倍になり、血管新生因子の発現も増加していた。潰瘍モデルマウスを作成し移植実験を行った結果、潰瘍の閉鎖が有意に早くなった(Tanaka, R., Stem Cell Translational Medicine 2021)。さらにヒトにおいて難治性四肢潰瘍患者10例を対象としたFirst in human臨床研究にて、当該細胞と因果関係がある有害事象の発生が見られなかった事、創傷治癒促進、血流改善、疼痛軽減などの効果が示されたことから安全性と一定の有効性が示唆された(Tanaka, R.,Stem Cell Translational Medecine 2022)。
MNC-QQ細胞は、非臨床試験およびヒトにおける臨床研究にて、血管再生能を持つことが示されていることから、虚血部位や血流が乏しい部位に移植することで移植部位における血流の改善、向上が期待される。このことから、MNC-QQ細胞は、虚血性疾患や結構再建、組織修復が必要な多様な疾患等に適応可能であると考えられる。そこで、MNC-QQ細胞によるこれらの著名な血管新生・血流改善効果に着目し、脱毛症の一因である毛包血流の改善効果による毛髪再生が可能と考え、研究がすすめられた。マウス背部潰瘍モデルに対してMNCQQ移植を実施し、潰瘍部位における毛根の再生を検証した。潰瘍部位の毛根数は、コントロール(細胞なし)に対し、MNC-QQ移植群では5.4倍に増加しており、MNCQQ移植が毛髪の再生に優位な結果であった。(データ未発表)[自施設における基礎研究]QQ培養法により得られる細胞(MNC-QQ)の特性解析を行い、以下の結果を得ている(Masuda H. et al, JAm Heart Assoc, 2014)。
1) 組織生成能に反映する分化型EPC (Definitive-EPC;DEPC)の数は、同じ血液量から得られる末梢血単核球数の19倍と高効率で得られることを確認した。
2) フローサイトメトリー法の結果から、MNC-QQは末梢血単核球と比較して、幹細胞マーカーの増加、内皮細胞マーカーの増加が確認された。
3) リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析により、末梢血単核球に対してMNC-QQは血管新生および筋原性サイトカインの発現増加が確認された。さらに抗線維化機能を介して血管再生や組織再生に重要な役割を果たすMMP-2、MMP-9などのマトリックスプロテアーゼ(MMP)は、MNC-QQで末梢血単核球と比較して有意に増加していた。
4) 血管形成能を評価した結果、生体外においてMNCQQは末梢血単核球よりもIn vitro血管形成能が高いことが示唆された。
【自施設における非臨床研究】
1) 小動物:マウス
マウス下肢虚血モデルの虚血部位へのMNC-QQおよびPBMNC末梢血単核球移植の結果は、健常脚に対する血流率で比較した。虚血後21日目のMNC-QQ移植群は、コントロール群(細胞なし)およびPBMNC末梢血単核球移植群に比べて血流がそれぞれ1.85倍、1.80倍に改善した。またMNC-QQ群では下肢切断に至る頻度が最も低く、治癒する割合が最も高かった。すなわちMNC-QQ移植は、下肢虚血に対して高い治療効果を示した。また、MNC-QQ移植は、末梢血単核球移植群およびコントロール群(細胞なし)に対して血管形成、動脈形成、筋形成が向上し、逆に線維化を抑制しており、組織修復において優位な結果であった(Tanaka R, WorldStem CellSummit 2013, San Dieg o, CA, 2013)。さらにマウス下肢虚血モデルへのMNC-QQの複数回投与試験により、一回投与量を低く設定しても治療効果が認められたこと、虚血マウスの下腿筋肉へ複数回投与したほうが高い血流改善効果が得られることが明らかになった。
2) 大動物:ブタ
免疫抑制剤を投与した家畜ブタ(20 kg以上、3頭)に2.5 cm四方の潰瘍を作成し、潰瘍部周囲 2×10^7個/匹のMNC-QQを移植した。これを生理食塩水移植群と比較しMNC-QQ細胞移植効果を判定した。結果、移植後10日目、14日目、17日目にMNC-QQ細胞移植群のほうが生理食塩水移植群よりも有意に高い潰瘍縮小率を認めた。潰瘍の組織学的評価をHE染色にて行った。結果、MNC-QQ細胞を移植した群では真皮の膠原繊維の構築が整い、より成熟した瘢痕が認められた(KadoM et al, Cell Transplantation, 2018 )。
【自施設におけるヒト臨床研究】
難治性四肢潰瘍患者10例に第I相試験臨床研究にて本細胞治療(単回投与)を実施し(First in human)、一定の安全性と有効性が確認された(anaka, R., Stem Cell Translational Medecine 2022)。上記の結果から、末梢血単核球のQQ培養法によって製
造された細胞は、末梢血単核球の血管再生能及び創傷治癒能を向上させることが示され、脱毛症においても毛包周囲血流改善の効果が期待できる。さらにG-CSF投与やアフェレーシス(成分採血)、また磁気ビーズなどを用いる細胞調製の過程を経ず、外来などでの通常の静脈採血により細胞を調製し培養するため、患者の身体的負担と副作用の危険性および経済的負担を軽減することから、今後様々な虚血性疾患治療において新たな治療選択肢となることが期待される。順天堂大学難病の診断と治療研究センター内に設置されたセルプロセシング室には、閉鎖系調製装置(アイソレータ)1台及び開放系調製装置(安全キャビネット)2台が配置されており、本臨床研究の実施に必要な細胞調製設備としての要件を十分満たしている。以上の実績により、脱毛症を有する患者に対するRicacell投与による臨床研究を行うことが可能であると判断した。
【投与量の根拠】
共同研究者である順天堂大学において行われた難治性四肢潰瘍患者に対するMNC-QQ細胞の臨床研究では、患者末梢血から得られたMNC-QQ細胞 2 x 107 個/患者を移植しており、MNC-QQ細胞移植の安全性が示されている[2]。また、申請者らが非臨床試験から推定した、有効性を示すと考えられる細胞数、腫瘍を作らない細胞数、そして移植細胞数の獲得に関しては後述の通り、末梢血200mLから得られた細胞を1週間QQ培養することにより3-4.5 x 107個の細胞が獲得可能であることから、細胞採取のために採血した末梢血100 mLから得られる移植可能細胞数として現実的な細胞数として設定した。
【特定細胞加工物の投与の可否の決定の方法】
以下のすべてを満たした場合に投与可とする。
1. 被験者からの同意の取得・参加時に同意を得る。
2. 製造における出荷判定・投与する細胞(Ricacell)の出荷判定を目的として細胞培養工程における無菌確認および細胞数の計測を行う。
【方法】
無菌確認:細胞観察時に目視にて、培養液の濁りの有無を確認する。培養液が濁っている場合は、顕微鏡観察にて菌汚染の有無を確認する。
エンドトキシン試験:細胞調製時の細胞加工物洗浄液を用いてエンドトキシン迅速試験を実施し、エンドトキシンの有無を確認する。
細胞数計測:トリパンブルー法による顕微鏡下での計測。以上の結果及び移植前の被験者の全身健康状態を確認し、研究責任医師(または研究分担医師)が総合に判断し投与の可否を決定する。
投与前の細胞において目視または顕微鏡下における観察、エンドトキシン迅速試験等において安全性に疑義が生じた場合には、製造部門担当者は研究実施責任者または分担者へその旨を報告し、その対応について指示を仰ぐ。連絡を受けた実施責任者または分担者は試験結果を精査し、被験者への投与の可否を判断する。投与後に安全性に疑義を生じる結果を知った場合には、該当部門の担当者は直ちに実施責任者または分担者へ連絡を行う。連絡を受けた実施責任者または分担者必要に応じて、被験者が適切な治療を受けられるように配慮する。
再生医療等安全性確保法(法)第16条、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」(省令)第34条に示される記録については10年間(研究終了後5年間)適切に保管し、その後は個人情報に注意して廃棄する。また、細胞培養加工施設における製造に関する記録として法45条に従い、省令111条に示される記録については10年間(研究終了後5年間)適切に保管する。
最終加工物の一部を参考品として保存することが可能である場合には凍結して保存するが、回収できた特定細胞加工物が少量であった場合には参考品の保存は行わない。本研究で得られた試料について、その一部又は全部を将来の研究等ために保管する。これらの試料を使用する場合は適切な倫理審査を経て改めて被検者より同意を得た上で使用する。
保管された細胞加工物は保管期間終了後廃棄処分とする。その際、個人情報の保護に留意しつつ、当該施設(順天堂大学難病の診断と治療研究センター内セル・プロセシング室(CPC))の規定に従った方法で適切に廃棄する。
疾病等の報告は法第17条、18条を順守する。再生医療等提供機関の管理者は、再生医療等提供計画に記載された再生医療等の提供に起因するものと疑われる疾病等の発生を知ったときは、以下のとおり報告を行う事とする。また、特定細胞加工物製造事業者又は再生医療等製品を用いた場合においては当該再生医療等製品の製造販売業者に対し、発生した事態及び講じた措置について速やかに通知する事とする。
【疾病等の内容-1】
以下に掲げる疾病等の発生のうち、再生医療等の提供によるものと疑われるもの又は当該再生医療等の提供によるものと疑われる感染症によるもの
イ 死亡
ロ 死亡につながるおそれのある症例
報告の期限:7日以内
報告先:地方厚生局長及び特定認定再生医療等委員会
【疾病等の内容-2】 以下に掲げる疾病等の発生のうち、再生医療等の提供による ものと疑われるもの又は当該再生医療等の提供によるものと疑われる感染症によるもの
イ治療のために医療機関への入院又は入院期間の延長が必要とされる症例
ロ 障害
ハ 障害につながるおそれのある症例
ニ 重篤である症例
ホ 後世代における先天性の疾病又は異常
報告の期限:15日以内
報告先:地方厚生局長及び特定認定再生医療等委員会【疾病等の内容-3】 再生医療等の提供によるものと疑われる又は当該再生医療等の提供によるものと疑われる感染症による疾病の発生等(上 記に掲げる疾病を除く。)
報告の期限:再生医療等提供計画を地方厚生局長に提出した 日から起算して60日ごとに当該期間(60日)満了後10日以内
報告先:特定認定再生医療等委員会
移植後観察期間中に認められた疾病などの発生・有害事象等につい ては、本細胞移植治療との因果関係の有無に関わらず、正常 化あるいは評価期間前のレベルに回復するか、臨床研究責任 医師あるいは分担医師が回復と判断するまで追跡調査を行う。ただし、臨床研究責任医師あるいは分担医師が回復と判断した場合、回復と判断した根拠を診療録に記載するものとする。なお、器質的な障害で不可逆的な有害事象が認められ た場合は、症状が安定または固定するまで追跡調査を行うこととする。
観察期間終了後については、研究責任医師又は分担医師が定期的に外来診療にて診察にあたり、継続的な追跡調査、効果についての検証を行う。
臨床研究責任医師又は臨床研究分担医師は、スクリーニング期に以下の項目を調査する。
・被験者識別コード
・文書同意取得日
・性別
・生年月日
・原疾患の治療歴、発症時期
・合併症の有無及びその内容
・既往歴
実施計画の公表日
募集中 Recruiting

5 細胞提供者及び再生医療等を受ける者に対する健康被害の補償の方法

細胞提供者について

再生医療等を受ける者について

6 審査等業務を行う認定再生医療等委員会に関する事項

特定非営利活動法人先端医療推進機構特定認定再生医療等委員会名古屋 JAPSAM Specific Certification Committee of Regenerative Medicine in Nagoya
NA8150002
愛知県名古屋市千種区千種2‐24-2 千種タワーヒルズ1205 1205 Chikusa Tower Hills, 2-24-2, Chikusa, Chikusa-ku, Nagoya, Aichi
052-745-6881
nintei@japsam.or.jp
第一種再生医療等又は第二種再生医療等を審査することができる構成
2024年10月29日

7 その他

研究参加者の個人情報は「順天堂医院が保有する患者個人情報保護に関する指針」に基づき保護される。
研究実施に係る試料等を取扱う際は、研究対象者の個人情報とは関係のない研究用IDを付して管理し、研究対象者の秘密保護に十分配慮する。作成した対応表は順天堂大学再生医学講座の鍵のかかるロッカーで保管され、個人情報管理者が厳重に管理する。試料等を他施設へ送付する場合は、研究用IDを使用し、研究対象者の個人が特定されることがないよう配慮する。また、記録媒体、郵送、電子的配信等にて送付し、送付先(研究事務局等の関連機関)では、鍵のかかるロッカーに保管され、個人情報管理者が厳重に管理する。また、研究の結果を公表する際は、研究対象者を特定できる情報を含まないようにする。また、研究の目的以外に、研究で得られた研究対象者の試料等を原則として使用しない。研究参加者に対して説明し得られた同意の範囲を超え、将来データ又は試料等を再生医療提供機関又は研究協力機関において利用する場合は、新たに患者の同意を得た上で使用する。
Yes
対応表を作成して匿名化し、データの解析を行う。 将来的に得られた臨床的知見、製造された細胞に関する情報を研究協力機関において利用する場合は、 新たに患者の同意を得た上で電子情報として共有する。 We analyze the obtained data anonymized using correspondence table. In case utilizing clinical findings and information about manufactured cells at a collaborating research institution in the future, electronic sharing will be conducted only after obtaining new consent from the patient.
再生医療の提供に携わる医師及び当該再生医療に関わる者は再生医療学会等の関連する分野の学会への参加、論文等により再生医療、細胞治療などに関する最新情報の入手を行う。
【再生医療移植に関する苦情および問い合わせ】
同意説明文書に以下の記載のもと、臨床研究責任医師らへ苦情および問い合わせを受ける窓口を設定している。連絡を受けた際には臨床研究責任医師および分担医師は被験者へ追加説明し、必要に応じて説明文書・同意文書の改定を行う。
【相談窓口】
順天堂大学附属順天堂医院 再生医学(形成外科)
〒113-8421
東京都文京区本郷3-1-3
TEL 03-3813-3111
研究責任者     医師  松原 忍
研究分担医師    医師  田中里佳
          医師  矢内香織
非該当
なし none
非該当
非該当
非該当

添付資料

4 再生医療等を受ける者に対する説明文書及び同意文書の様式 05_説明文書及び同意文書_masked.pdf